中小企業法制の知識その1:中小企業の団体交渉
あけましておめでとうございます。昨年は、震災をはじめとして、例年にまして多事多難な年であったのではないかと存じます。それに負けることなく、果敢にチャレンジを続けていける年になればと思います。
さて、今月号からしばらく、中小企業法制に関するトピックをいくつか、ご紹介していきます。中小企業に関する法律は数多くあるのに、必ずしも積極的に使われているわけではありません。やや使いにくいところがあるからです。しかし知識としては必要なものだと思われます。
今回は、中小企業の団体を設立して組織化し、大企業と対抗できるようにしようとする法律があることをご紹介します。
まず、戦後まもなく制定された「中小企業等協同組合法」は、組合員である中小企業の相互扶助を目的とした協同組合を設立させることを通じて、中小企業の事業規模をいわば仮想的に大きくし、その取引相手である大企業と、対等の交渉力を持たせようとする法律です。同法3条は、中小企業組合の種類を定めており、そのうちの事業協同組合をみると、その役割は、生産、加工、販売、運送等の事業を共同で行ったり、事業資金の貸し付けや借り入れを行ったり、福利厚生事業をしたりするほか、「組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結」をすることです(同法9条の2第1項6号)。
この「団体協約」は、中小企業の事業協同組合と、組合員である中有小企業の取引相手である大企業との間で結ばれる、取引条件に関する取決めです。同法は、「団体協約は、あらかじめ〔事業協同組合の〕総会の承認を得て、同号の団体協約であることを明記した書面をもつてすることによつて、その効力を生ずる」(同条第13項)、「団体協約は、直接に組合員に対してその効力を生ずる」(同条第14項)と定めたうえで、「組合員の締結する契約であつて、その内容が……団体協約に定める基準に違反するものについては、その基準に違反する契約の部分は、その基準によつて契約したものとみなす」(同条第15項)と定めます。
この結果、組合員である中小企業が、団体協約で定められたのと同じ内容の取引で足並みを揃えることができます。ちょうど、労働組合法14条以下にいう「労働協約」と似ています。労働協約は、労働組合が使用者側との間で締結する労働条件などに関する取り決めです。労働組合法16条は、「労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする」と定めています。